最寄駅の近くに小さな川が流れている。小さいとはいえ土手もある立派な川だ。ちょっと眺めた。川の魔力に取り憑かれそうだった。川に吸い込まれそうだった。橋の上から身を投げる人の気持ちが痛いほどわかった。ところで、川の不思議なところを書き連ねてみる。

 

川の源流。僕は中学の時に荒川の源流を見に行ったことがある。だが、そこは急流の途中、僕が想像していたような岩から水が滲み出ているようなところではなかった。

 

夜の川。これほど妖しげで魅力的なものはこの世にないのかもしれない。昼に見せる(夏は)涼しげなせせらぎの音が聞こえ、小さな魚影すら見える、川自体がまるで一つの生命体のやうに生きている。いや、活き活きとしている。そして夕方。夏の夕方ほど暑苦しくて嫌なものはない。だが川の近くにいると音と夕日が反射する川面が不思議と暑さを和らげる。(蒸発時の気化熱の効果でおそらく実際に温度が低いだろうが...)だが、一旦日が沈むとそこは一変する。昼間の活き活きとした様子が嘘だったかの様に。水面は黒に黒を混ぜたような、この世の黒を集めたような、いつまでも見ていたら吸い込まれるような気持ちになる。そういえば昔、夜の砂浜で寝っ転がって夜空を見上げた時、僕はこのまま宇宙へ行ってしまうのかもしれないというような錯覚を受けたことを思い出した。そんなこと実際にはありえない、ただの幻想に過ぎないのだが。まるで夜空と一体になったようなそんな感覚になる。川に話を戻す。そんな暗黒の川は流れすら感じさせない。永遠にその場にとどまっていて、まるでその川は死んでいるかのようだ。だが、ただ死んでいるだけではない。その世界は我々をも引き込んで行ってしまおうとするような魔力を持っている。 

川の魔略と魅力に惹かれたとあるが、別に自殺を僕が企てているわけではないのでごあんしんを。