喫茶店

駅前にあるチェーンの喫茶店に入る。何も考えずにメニューの一番上のブレンドコーヒーを頼む。メニューに書いてある金額が税抜きであることに多少イラつきながら会計を済ます。適度に混雑し、食器を片付ける音とBGMが無駄に大きく聞こえる店内に入りコンセント近くのソファに座る。ここで2時間過ごすのかと考えると多少気持ちは憂鬱になるがまぁ仕方がない。カウンターも空いているのにわざわざ2人掛けソファを200円ちょっとで2時間も独占する迷惑な客ではあることを自覚しつつそっと本を読む。本を開いた途端に6人の団体客が店内に入ってきたため途端に騒々しくなり本を読む気分にもならず、そっと閉じパソコンを開く。不具合でつかない。側から見れば真っ黒な画面をただただ見つめている変なやつであったろう。時折電源がつかなくなるこのパソコン、確か昨日もつかなかったなと思いながらコーヒーを啜る。砂糖をすっかり入れ忘れていた。苦い。砂糖を取りに行く。まぁ僕の性格を知って入ればわかるだろうがマドラーは忘れる。いつものことなので砂糖を入れた後に気づく。別にそれが何か億劫でもないのでマドラーを取りに行き、席へ戻りまたパソコンを開く。パソコンはつかない。不具合の時の方法などを調べて試したがやはりつかない。修理に出したほうがいいのだろうかとも思ったが、今出したところで遅いだろうと考え直した。外が暗いため窓ガラスが鏡のようになり、真反対の駅の改札が映っていた。改札は忙しなく動く人が映り、誰も彼も同じようにみえる。なぜなら、人の向こうがとても明るいため人が影になり黒の人型しか見えないからだ。スマホを見ているのか、なぜか俯きがちな人が多いなと思ったが、スマホではなく改札のスイカの触れるところを見ているのかと納得。絶え間なく続くLINEに、感情をなくし返信をする。母親からも来ていた。投票のことを心配してくれていた。心の底の黒い気持ちをそっとしまいながら、「大丈夫」と返す。「特に平気だったみたいよ」、無論僕の気持ちに波風が立たないわけがないが、こんなことを気にしてどうするエリート、と心の中のナルシストが発言してなんとか収まる。そして、なんとなくこれを書く。ここらでちょうど2時間が経ち、すっかり冷めきったコーヒーを飲む。さっきの店で飲んだコーヒーはあんなに美味しかったのに...ここのコーヒーは冷めたからといってもこんなに美味しくないことがあるだろうかと思ったが、おそらくコーヒーのせいではないことは自覚している。先ほどのコーヒーはすごく甘かったなぁと舌の感覚を思い出した。ドトールだかスタバだかなんだか忘れてしまったが、そこのコーヒーも今度飲んでみようと思う。きっと甘くて美味しいだろう。そんなことを思いながら残りの冷めた苦いコーヒーを飲み干す。さぁそろそろ時間が来たようだ。ご馳走さまと小さな声で呟き店を出た。