炎上PJノ消火活動二関スル記録

※今回の記述はあくまでフィクション

※実在する団体並びに個人とは一切関係がない

※あくまで私個人が後程見返すために綴る記録。悪しからず。

 

【前提】

・2月末に行われるイベントの遂行をするプロジェクト。

・4年を期限として団体から去る。この団体の資本は株式会社Xが100%保有し、この団体実際に支配しているのはこの株式会社X。(自治体が100%出資している財団法人の関係に近い)

 

【登場人物/団体】

・株式会社X

・社長:A氏

イベント創設期からかかわっており、この団体に関する100%の意思決定権を持つ。朝令暮改は日常茶飯事で、信用度は極めて低い。野心は強く、金銭的な執着も強い。最近は関連別事業へ興味が移り、このイベントの関心度は極めて低い。

・イベント担当:B氏

最近入社したと思われる。学生時代に出演側としてかかわっていた。社長には、一切意見の具申ができないほど逆らえない。

 

・団体

・団体トップ:C氏

おそらく2年目。将来有望との触れ込みがあったが、実際にはそうでもない。(主観)自分はできると思っている。周りを見下しているが、それ以上に周りに見下されていることには気が付いていない。懇意な関係の人物が数人いる。

・ユニット長会議

この団体の意思決定機関。現状、無力化されている。構成員のコロナ禍におけるイベント経験の無さに加え、実行委員長の求心力の低下など、ここでの決定事項は意味をなさない。

・技術ユニット長:D氏

おそらく2年目。このユニットは専門的な知識が要求され、花形ともいえる。このユニットの長は各技術専門家たちとの綿密なコミュニケーションとそれらリクエストへ間断なく対処が求められる。D氏はプライベートな環境に課題を持つ。

・技術ユニットメンバー:E氏F氏

おそらく3年目。ほぼ二人で「一体」である。しかし、お互いが完璧な意思疎通ができているかというと疑問符が付くが、凡そしっかりとすみわけができている。

・ジェネラルユニットメンバー:私

4年目。元ユニット長。このユニットは専門的な知識というより、PM的な役割を務める。そのため、小規模イベント時には役割は限りなく少なく、今回の大規模イベントの時のみ各情報の整理が求められる。ここ2年は新型ウイルスによる大規模イベントの中止でこの経験がない。

 

【2022/1/6】

・数年前に比べ、ユニット長会議の質低下がみられた。しかし、特筆して何か問題がるわけではなく、凡そ個々人の若干の焦りの無さからくるもので、時間が解決すると思った。そもそもの会議の経験不足はこの団体ではよくあることで、冗長的な話が多いのも、敢えて指摘するほどでもなかった。

・イベント担当B氏の過度な介入が気になっていた。針小棒大にいうことで、会議の進捗を妨げていた。自らが「上」の存在であることをアピールするためであると推測したが、それだけであればそこまで重大な問題ではないので無視した。

・そのため、現役メンバーに基本的には任せ、イベントの詳細な運営に関する会議(会議①)及びイベント当日のみの参加にしようと決めた。

 

→この時点で決定プロセスに対する不安を感じることができたはずだった。完全な私の見落としである。

 

tips:会議の質は組織の質。

個々人の質を見極めることは不可能だが、組織的な能力を見ることができる。ただし、外部の者が参加するということで、実際以上の能力を発揮(もしくはその逆)している場合もあり、「進行方法」「議事録の方法」など、仕組み面と「全体的な空気感」という経験に基づく定性的なものの2点から把握することが望ましい。

 

【2022/2/1~3】

・会議①の準備をするために情報の収集を始める。

・この時点でイベントに対する共通理解がないことを把握するが、新型ウイルスによる理由で決定が遅れていると思っていた。

・PJの実際の実行部隊とユニット長会議のメンバーがほとんど一致しないことに一抹の不安はあったが、昨年、同規模類似イベントの実績により、問題意識はなかった。

・団体トップであるC氏の影が薄く、例年であればこのイベント概要を定め終わる時期こそ、ほとんど最後の山場になってくるにもかかわらず、登場しないことに若干の不安を覚えるが、私が知らないだけで「ほどんど決まっているので」やることがないだけであると推察。

 

 

→この時点では組織に問題があるとはほとんどわかっておらず、かつ技術ユニットに対する危機感を全く抱けなかった。しかし、実際にはユニット長会議参加者の大多数は、C氏に対する不安はすでに抱えており、落下傘的に降りた私にはそれを把握することができていなかった。

 

tips:Day0に相手の組織を把握する。

特に力関係や、パーソナルな部分を中心にインタビューをすること。肩書や学歴などは一切参考にならない。プロジェクトの成功はDay0にあるといっても過言ではない。「実質的な再生案件」であるという認識を持ちクイックアプレーザルを実施、再生可能性を含めて検討しなければ「必然的な炎上」につながる。

 

【2022/2/4~6】

・情報が出てこない原因がイベント担当B氏にあることが分かる。不足情報のほとんどをB氏が持っていた。しかし、この団体の窮境要因がB氏にあることは本人は自覚しておらず、B氏は団体トップC氏に窮境要因があると考えていた。

・C氏は「何もしていない」だけで直接的な窮境要因にはなっておらず、全体の士気を押し下げるという間接的なマイナス要因として存在しているだけだった。

・技術ユニットの特殊性から、ユニットメンバーE氏F氏にはあらかじめ情報の吸い上げをお願いしたところ、この時点でE氏F氏が何も把握していないことが発覚。つまりD氏は何もやっていないor情報を秘匿しているの二択が考えられた。

・またここで行われた会議①に技術ユニット長D氏が出席できず、このままだと立ち行かないことから、やむなく解任の提案をすることにした。ここで、急に団体トップC氏、イベント担当B氏は以前からD氏に関する不安を抱えていたという告白をした。つまり、技術ユニットというイベントの中心であるのにもかかわらず、問題を放置し続けていたということである。また、解任の連絡も彼らはせず、私を通してさせたことから、B氏C氏の両人には「任命責任」の概念は特になく他責思考であることが分かった。

・団体の末端メンバーどころかユニット長会議のメンバーですら危機に気が付いていない人もいることから、本格的に組織が崩壊していることにやっと気が付く。技術ユニットを外部から実質的に統括する方(G氏)と連絡をとり状況を伝えたところ、凡そ同じ見解であることが発覚。危機意識が共有できる人物が見つかったことに一安心。

 

→B氏が窮境要因であることにやっと気づく。遅すぎた。これまでC氏が窮境要因だと考えていたが、彼はもうすでに意思決定から遠ざかっており(適切かはさておき)、それにすら気が付いていなかった。組織の意思決定構造は正確に把握しておくべき。また、「実質的な」意思決定はどこで行われているかを確認することが組織構造を確認する際には大事。

 

tips:実質的な意思決定の場と「本来の」意思決定のばは違う

最後まで本来の形にこだわり続けてしまうという失態を犯したが、早く見切りをつけ、現実にあった意思決定フローを構築し、それを徹底させる。

 

【2022/2/7~2/10】

・この間にスタッフ各位から団体トップC氏に対し懲戒動議が出されており、イベント担当B氏、社長A氏との三人の会議がもたらされるが、変化は特になし。

・懲戒が既定路線だと考えていたスタッフ各位は士気が下がる。またここからイベント担当B氏の主張が強まる。イベント担当というより、1スタッフとしての動きに近くなり、内部の政治的な指揮系統が崩壊する。(実質的な意思決定は私が行っていたが、ここで形式的な意思決定ですら崩壊することになる)

・B氏はより一層団体トップC氏をスケープゴートにしようとし、C氏もまたそこになすすべがない。

 

トップダウンでの組織の改善に失敗する。この原因は会議参加者のうち、3人中2人が組織の窮境原因である人物であり、社長A氏は実務にはかかわっておらず、そもそも会議が成立していなかった。トップに近いマネジメント層に腐敗の原因がある場合、マネジメント層での解決は不可能であり、実務から離れた層が判断をしなければならなくなる。この時の判断はスタッフにヒアリングするなど、スタッフ層を含めて意思決定をするべきだった。私自身も、A氏の大岡裁きに完全にこれら問題の解決を委ねており、大きな過ちであった。

 

tips:マネジメント層の腐敗の改善は難しい。任命時に厳格に判断することはもちろんのこと、その後の改善は早く、そして改善する際はスタッフにヒアリングを。

 

 

【2022/2/11~2/14】

・ここでイベント会場との会議がもたらされるが団体トップC氏は出席せず。イベント担当B氏は事前に資料を全く送付していないことや、提出書類の不備、視認性を度外視した紙媒体資料など、社会人としては残念極まりない内容であった。G氏と私が主に実務的な内容をすり合わせることになった。

・また、12日ごろB氏C氏ともに全く連絡が取れない時間が半日以上続いたため、その状況を社長A氏に報告、直接やりとりし、期日に迫っていた堆積していた意思決定事項を進める。

・再度G氏に現状を報告し、B氏C氏の実質的な機能不全の現状を共有。そもそも現状の内容ですらきちんとステークホルダーに共有されていない可能性があるなど、考えられ得る最悪の現状を想定し、G氏は技術ユニットについて、私はその他の範囲について前団体トップなどへのヒアリングを通じ、現状の確認と課題の整理を実施した。

 

→前項と同じ感想。

 

【2022/2/15~20】

・イベント担当B氏の主張の伸長は続き、C氏は実質的な意思決定から完全に姿を消した。

・私が考え得る事象についてひたすら各スタッフを追いかけるという正常な意思決定、スケジュールとはかけ離れた行為を120時間程度ひたすらやり続けることで、イベント一週間前までにある程度の形を作ろうとした。

 

→後から考えればここからB氏C氏への不信感から低下し続けていたスタッフの士気はこのあたりが底だったと感じる。また、経験不足なども相まっていたのか、スタッフの質は相当低く、能動的に動けるスタッフは2人、受動的にすら動けるスタッフは片手で数えられるほどもいなかった。(スタッフ自体は20人強)

 

tips:スタッフはあらかじめどの程度の能力なのか、何が得意なのかはおおよそ把握しておくべき

 

【2022/2/21~2/27】

・ここからはほとんど意思決定は私の手元で行われるようになるものの、イベント担当B氏のフローを無視した意思決定は続く。

・主に私の作業はB氏が(意図的になのかは不明であるが)秘匿している意思決定事項を引っ張り出し、各位にコンセンサスを取り共有する作業を続けることになる。

・技術ユニットの遅れが若干気にはなっていたが、致命的な遅れではなく、G氏にお任せすることにする。

・2/26時点で資料はほとんど出来上がっておらず、とにかく「人」「モノ」をそろえることのみに手中することを決定し、スタッフに伝えるものの、翌日まで動いていないか、およそ完成からは程遠いものを「完成」とするなど、QCDのすべてを満たしていないのが今の組織の限界だった。

・2/27時点で早々に団体トップC氏が帰宅する、イベント担当B氏が全体の進捗を確認するわけではなく目の前の作業に集中しているなど、今回の様相を象徴する出来事が次々に起こる。

・スタッフが「確認済み」としてあげてきた資料は崩壊しており、備品も用意されておらず、会場入り6時間前に、マネジメントとしての作業ではなく、スタッフレベルの作業を一人で行い完結しなければ間に合わないとし、作業を開始する。作業自体は4時間程度で完了した。

 

【感想】

最終的に消火できたとは言えない。端的に言えば、消火しきれなかったのは私の能力不足であった。ここに書かれたすべての事象は前もって防ぐことができたはずである。途中から記述が薄くなっているように、目の前の火を消し続けていたらイベントの当日が来てしまった。途中からは戦略的に(戦術的に)消火する、もしくは防火することができなくなっていた。ある程度までに組織の意思決定構造を掌握できなかったことにすべての原因がある。

あえてここでは記述を避けるが結果の出来は言うまでもない。なんとか成立させたとみるのが限界の評価だろう。しかし、彼らの反省を見ると団体トップC氏、イベント担当B氏の両方が反省項目が空欄であったり、各スタッフの反省項目が瑣末な出来事しか書いてないなど、同じ轍を生むことになるのは容易に想像できた。

この団体の今後を知る由はないが、今後別の場でも起こり得る事項が多分にあり、それを経験値として社会に出る前に収穫できたのは大きい。一か月間の隙間時間で得た経験としては、非常にコスパがよかったのではないか。別の場ではここに収益責任も問われてくる。次回以降は必ず消火し、防火策を講じることができるようにする。